桜が咲く季節に読みたい!春にぴったりの小説19選

春に読みたい小説

コンビニ人間

作者:村田沙耶香

コンビニ人間

<あらすじ>

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。

「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。

ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

社会の枠に囚われず、自分を大切に生きる力を教えてくれる物語

『コンビニ人間』は、社会の枠に馴染めない主人公・古倉恵子が、自分を受け入れる過程を描いた物語です。
春という季節は新しいことを始める時期ですが、この本は「社会に適応できない自分を受け入れること」をテーマにしており、春のような清々しい気持ちで読めます。主人公が抱える不安や孤独感が共感を呼び、自己肯定感を育てることの大切さを気づかせてくれる作品です。
新しいスタートを切る春には、自分のペースで生きることの大切さに気づくことができるかもしれません。(30代女性)

「コンビニ人間」の関連テーマ

最後の医者は桜を見上げて君を想う

作者:二宮敦人

最後の医者は桜を見上げて君を想う

<あらすじ>
続々重版、25万部突破!本読み書店員が選ぶ「感動小説」第1位!
自分の余命を知った時、あなたならどうしますか?
死を肯定する医者×生に賭ける医者
対立する二人の医者と患者の最後の日々――
衝撃と感動の医療ドラマ!

最期のその時の選択肢

医療現場での命の終わらせ方をいうものを考えさせられる小説となっています。
職場から疎まれる死神と呼ばれる医者が手術の成功が少ない患者や感知不可能な患者と話し合って、命の選択をしていくという話です。
終わっていく命の儚さと、桜の花の儚さが重なってとても切なく、命の使い方を考えさせられる話なので、桜の咲く春に読みたい作品と思いました。(20代女性)

どこかの事件

作者:星新一

どこかの事件

<あらすじ>
のんきで明るいサラリーマンが、ねごとで妻にもらした見知らぬ男への殺意。ねごとでの殺人計画はしだいに具体化していく。はたして、夢の中の出来事なのか、それとも本当は……。
他人には信じてもらえない、不思議な事件はいつもどこかで起きている。日常的な時間や空間を超えて展開する非現実的現実世界をウイットあふれる語り口で描き出す、夢とサスペンスにみちたショートショート21編。

小さいミステリーが詰まった1冊

ショートショートのとても短い小説が集まったものなのですが、ミステリーなのに短いのでのめり込みすぎず読めます。春のポカポカした陽気の中で内容について考えるのが新鮮です。
春の新しいことが始まる季節に、時間がなくてもさらっと読めて、続きものではないのに次の話も読みたいとテンポよく読めます。忙しい時期に読書がしたくても本を手に取りにくいと思う時にミステリー×ショートショートがちょうどいいです。(30代女性)

花のあと

作者:藤沢周平

花のあと

<あらすじ>
娘盛りを剣の道に生きた武家の娘、お以登にも、心中ひそかに想う相手がいた。部屋住みながら道場随一の遣い手・江口孫四郎である。女剣士の昔語りとして端正に描かれる異色の表題作のほか佳品七篇(「鬼ごっこ」「雪間草」「寒い灯」「疑惑」「旅の誘い」「冬の日」「悪癖」)。

武家の老婆が語る、若き日の叶わなかった恋とその想い人の理不尽な死への敵討ちの顛末、そして夫との馴れ初め

時代小説で有名な藤沢周平の作品の一つです。北川景子主演で実写映画化もされたことがあります。この作品自体は、時代小説は、難しくて取っ付きづらいと思っている方も多いと思いますが、藤沢周平の作品は読みやすいです。作中の花見のシーンが素晴らしいので、春にぴったりの時代小説です。

作品の主人公は、以登(いと)という名の武家の娘です。作品自体は、彼女が老年になって、自分が娘時代に経験した恋を孫たちに語るという形になっています。
以登の父は、夕雲流という剣技を極めた剣の名人で、若い頃に江戸詰めを命じられ、その任が解かれた後も夕雲流を極めるためだけに江戸に残り続けて修行し続けた人でした。そのため、国に帰っても出世は出来ず、一度帰郷した折に結婚した妻を長年待たせたため、子供も以登一人だけしか授かることが出来ませんでした。
しかし、父親は以登に、自身が学んだ夕雲流の剣技を教え込み、以登もそれを喜びとして育ちます。そんな剣一筋の以登が年頃となり思いを寄せた相手がおりましたが、彼は別の女性と結婚した後に、江戸詰めの際に理不尽な形で切腹する羽目に。以登は、そんな彼の無念を晴らすために立ち上がるのです。(30代女性)

葉桜の季節に君を想うということ

作者:歌野晶午

葉桜の季節に君を想うということ
《あらすじ》を見る

まさかのどんでん返し

物語の題名にも桜という言葉が入っていることからも分かる通り、春が舞台の小説になります。
元探偵の主人公が霊感商法の調査を依頼することから物語が始まりますが、そこから数々の困難に巻き込まれていきます。
ただのミステリー小説かと思いきや、それだけにはとどまらず、物語を最後まで読んだ後、必ずもう一度読み返したくなるような内容になっています。(20代男性)

ノルウェイの森

作者:村上春樹

ノルウェイの森

<あらすじ>
十八年という歳月が流れ去ってしまった今でも、僕はあの草原の風景をはっきりと思い出すことができる――。1969年、大学生の僕、死んだ友人の彼女だった直子、そして同じ学部の緑、それぞれの欠落と悲しみ――37歳になった僕は、機内に流れるビートルズのメロディーに18年前のあの日々を思い出し、激しく心をかき乱されていた。

青春の喪失と再生を描いた、心に残る物語

「ノルウェイの森」は、青春と恋愛、喪失と再生をテーマにした物語ですが、この作品が春にぴったりな理由は、主人公のワタナベが新しい環境や人々との出会いを通じて成長していく姿が、春の新しい始まりと重なるからです。
春は新しい出会いや変化の季節なので、ワタナベの心の旅路がその季節感と見事にリンクしていると思います。(40代男性)

人生の意味を問いかける物語

春の風に似た静かな美しさを感じさせます。物語の中で、主人公が人々との絆を深めたり、別れを経験するシーンが心に残ります。特に春という季節の象徴的な意味が、人生の新たなスタートや変化と重なり、読み進めるたびに心が温かくなります。彼の筆致は、春の気配が漂うような感覚を呼び起こし、感情の変化や成長を鮮やかに描き出しています。(30代女性)

春の雪

作者:三島由紀夫

豊饒の海 春の雪

<あらすじ>
ともに華族に生まれた松枝清顕と綾倉聡子。互いに惹かれ合うが、自尊心の強さから清顕が聡子を遠ざけると、聡子は皇族との婚約を受け入れてしまう。若い二人の前に、燃えるような禁忌の道が拓かれ、度重なる密会の果て、ついに恐れていた事態を招来する──。
三島が己れのすべてを賭し、典雅なる宿命世界を描き尽くしたライフワークたる『豊饒の海』第一巻。

美しい文章で綴られる明治華族の悲恋物語

三島由紀夫の豊饒の海四部作の第一部ですが、本作だけでも物語は完結しているので気軽に読むことができます。明治時代の華族階級の青年の恋物語なのですが、主人公である松枝清顕と、四部作共通の狂言回しの役どころである本多繁邦の友情関係も読みどころのひとつといえます。ストーリーは朝ドラっぽい、メロドラマ式の悲恋ものであはるのですが、三島由紀夫一流の耽美的な文章で非常に読んでいて美しく感じる文章が多いです。(40代男性)

「春の雪」の関連テーマ

重力ピエロ

作者:伊坂幸太郎

重力ピエロ

<あらすじ>
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

春が二階から落ちてきた

書き出しの名文、「春が二階から落ちてきた」を味わうために読みたくなります。
この「春」は主人公兄弟の弟の名前で、季節の春はそれほど関係ないのですが、どんどん読めるミステリーです。
兄弟が抱えている謎自体は悲しいものですが、家族愛や兄弟愛とはどこから生まれるものなんだろう……と考えさせられ、読後は温かい気持ちになれるような不思議な作品です。(30代女性)

春琴抄

作者:谷崎潤一郎

春琴抄

<あらすじ>
盲目の地唄の名手・春琴は丁稚奉公の佐助と心を通わせていく。そんなある日、お琴が顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。そのとき佐助は――。異常なまでの献身によって表現される、愛の倒錯の物語。

女主への使用人の献身的な愛の物語

盲目の三味線奏者、類い稀な美貌を持った春琴とその使用人である佐助のお話を第三者目線で書いたものです。
幼い頃に失明した春琴が好んでいた雲雀(ひばり)。雲雀は繁殖期の春になると天高く飛んでさえずる「揚げ雲雀」と呼ばれる習性があります。春になると姿は見えずとも雲雀の鳴き声がどこからか聞こえてきます。目の見えない春琴がこの降り注ぐようなさえずりで春を感じ、四季のうつろいを味わっていたのだなぁと思います。

この物語は佐助の春琴への献身的な愛が描かれており、谷崎潤一郎の傑作として現代でも多くの人に親しまれています。この時代の小説に読み慣れていないとちょっと苦戦するかもしれませんが、一度ハマると癖になると思います。(30代女性)