ホラー初心者も安心、怖さレベル付きおすすめのホラー小説17選
「きつねのはなし」森見登美彦
怖さレベル:★★
<あらすじ>
京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々起こる怪異の結末は―。
ジワジワやってくる恐怖
わかりやすく怖がらせてくるタイプのB級ホラーとは大きく異なる点が良かったです。読み進めるとジワジワやってくる背筋がゾクッとするようなえも言われぬ恐怖感が不思議とクセになります。また、著者ならではの独自性のある世界観に引きずり込まれる感覚もたまりません。類まれなる筆致に圧倒されること間違いなしの1冊です。(20代女性)
「きつねのはなし」の関連テーマ
「ペット・セマタリー」スティーブン・キング
怖さレベル:★★★
<あらすじ>
競争社会を逃れてメイン州の田舎に越してきた医師一家を襲う怪異。モダン・ホラーの第一人者が“死者のよみがえり”のテーマに真っ向から挑んだ、恐ろしくも哀切な家族愛の物語。
家族への愛が生んだ悲劇
幼い息子を失った主人公は、悲しみに暮れるあまり墓を掘り起こし、先住民の力が宿ると言われる土地に息子を埋葬します。
息子は生き返り、父親の元へと帰ってきますが、それは息子の姿をした別の何かでした。
蘇った何かに狙われる恐怖もありますが、それ以上に失った家族を取り戻したいという父親の愛や切なさを感じる作品です。
悲しみのあまり、主人公が徐々に狂気へと引き込まれていく過程も楽しめます。(20代男性)
「夏と花火と私の死体」乙一
怖さレベル:★★★
<あらすじ>
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく――。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄弟の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか? 死体をどこへ隠せばいいのか? 恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作品。
田舎の夏の異様なストーリー
舞台が夏で幼い頃の夏を思い出しつつホラー要素があるので、そのギャップは読んでいるだけでも異様な空気感を感じてきますし、死体からの角度で物語が進んでいくので、尚更怖さを感じました。また、登場人物の兄弟も無表情と言うかあまり感情を感じられないですし、セリフも凄く冷めているような感じがあり怖さに拍車がかかります。(30代男性)
「殺戮にいたる病」我孫子武丸
怖さレベル:★★★
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
殺戮者のリアルな心境が読める
お化けが出るなどではないですが、人間の内面に潜むリアルな狂気性を描く事に恐怖する内容となっています。人を殺す男がいて、その過程における心理描写をしっかりとしています。殺人者のリアル性ある語りで心境が読めてくる点に意外性と新鮮味がありした。そういうことをしておいて平然としていられる神経に真に恐怖する内容になっています。場面によって人物の視点が切り替わる見せ方に面白みがあります。(30代男性)
「殺戮にいたる病」の関連テーマ
「GOTH―リストカット事件」乙一
怖さレベル:★★★
<あらすじ>
森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、まだ発見されていない被害者の死体を見物に行くことを決めた…。触れれば切れるようなセンシティヴ・ミステリー。
薄ら怖いボーイミーツガール小説
人には言えない趣味嗜好を持った少年少女があらゆる《死》に触れる物語です。
主人公の「僕」とクラスメイトの「森野夜(よる)」。
二人に共通するのは殺人や異常犯罪に興味があり、あらゆる《死》を日常の水面化で求めていることでした。
そんな2人に引き寄せられるように、周囲でも不可解な事件が起こります。
もしかしたら私たちの知っている人も内面はこんね風に残酷なのかもしれない…と背筋が凍るような人間の怖さを感じられる小説です。(30代女性)
「姉飼」遠藤徹
怖さレベル:★★★★
さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は―。蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜。小学生の僕は縁日で、からだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫ぶ「姉」を見る。どうにかして、「姉」を手に入れたい…。僕は烈しい執着にとりつかれてゆく。「選考委員への挑戦か!?」と、選考会で物議を醸した日本ホラー小説大賞受賞作「姉飼」はじめ四篇を収録した、カルトホラーの怪作短篇集。
純愛なのか狂気なのか
この作品の「姉」の設定がすごいのですが、この作品の「姉」とは女性の姿形をした生き物を串刺しにした人間のような生き物であり言葉も話すことはできず、串刺しにされても数か月は生き延びる生命力のある狂暴な生物。姉を購入した人はその命が尽きるまで彼女を嬲り苦しむ姿を見ることで性的興奮を得るのでした。姉以外の世界観はわたしたちが暮らす現実と変わらないのですが、この作品の「姉」が狂気の世界を演出している、とてつもなく不気味な存在となります。この作品の主人公の少年はある日、同級生の女の子と一緒に隠れて「姉」が鞭でいたぶられるのを覗くのですが、その家の主人に見つかってしまいます。翌日同級生の女の子は行方不明。ここだけでもうゾッとするところであり、嫌な予感しかしません。しかし主人公の少年は「姉」に対して興奮と欲望が支配していき、大人になってから「姉を飼う」だけのために必死で働き、全財産を投げうってでも次々と姉を飼っていく姿はおぞましいです。次第に人の道を外れた行為にも手を伸ばして…、と次第に姉と普通の女性との区別がつかなくなっていくなど狂気と底知れぬ闇を感じる作品です。最後まで目が離せない作品ですね。(30代男性)
「天使の囀り」貴志祐介
怖さレベル:★★★★
<あらすじ>
北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように、自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンで、いったい何が起きたのか?高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?前人未到の恐怖が、あなたを襲う。
人間の心理状態がだんだんおかしくなっていく描写がリアルで恐ろしい
この作品の怖いところは、頭の中に謎の声や音が聞こえてきて、その結果として死を選んでしまう不条理さが丁寧に描かれているところです。そしてその音の正体に主人公が迫っていく中で、衝撃の事実がどんどん明らかになっていくところもかなり面白いです。後半になるにつれてスケールも広くなっていき、全くもって次の展開が予想できないところも面白い作品です。(20代男性)