【巨匠】黒澤明監督の名作おすすめ映画12選
戦前・戦後にかけて多くの作品を作り上げてきた黒澤明監督。
海外の著名な映画監督達にも影響を与えてきたとされて、「世界のクロサワ」とも呼ばれている巨匠です。
黒澤明監督の作品を見たことがない人や、「影武者」「乱」といったカラー時代の大作しか知らない人は、黒澤映画を難しいというイメージを持っているかもしれませんが、白黒時代の作品にはエンターテイメントに溢れるものも多いです。
「用心棒」やその続編の「椿三十郎」などはエンターテイメント性豊かな娯楽時代劇として楽しめますので、黒澤映画を難しそうと思ってる人にもおすすめ出来る傑作ですし、また感動的な作品なら「赤ひげ」や「生きる」、サスペンス物なら「天国と地獄」など、様々な作品があります。
黒澤明監督作品の名作・傑作映画の中からおすすめの12作品をご紹介します。
羅生門
<あらすじ>
平安時代。土砂降りの雨に煙る羅生門の廃墟で旅法師と杣売りが首を傾げていた。走り込んで来た下人の問いに答えて2人は不思議な話を語り始める。都で名高い盗賊・多襄丸が森の中で武士の夫婦を襲い、夫を殺した。だが検非違使庁での3人の証言は全く言っていいほど異なっていた…
証言が食い違った殺人事件。正しいことを言っているのは誰なのか?
時は平安時代。人気のない山中でとある夫婦が悪名高き盗賊・多襄丸(三船敏郎)に襲われた。武士の夫の死体が見つかり、検非違使による取り調べが始まるが、当事者である多襄丸と夫を殺された妻(京マチ子)の言い分は真っ向から食い違っていた。そこで巫女の力を借りて殺された夫を招集するも、またも言い分が異なっていた。正しいことを言っているのは誰なのか?ついに事件の目撃者が重い口を開く─。
同じ事件について語っている筈なのに、登場人物たちの見栄やエゴで証言が全く異なってくる描写が面白かったです。悪役なのに三船敏郎さん演じる多襄丸のキャラクターが妙に可愛くて憎めませんでした。
また、ある証言では清楚な女性になり、またある証言では妖艶な女性になる京マチ子さんの演技の振れ幅の大きさにすっかり魅了されてしまいました。
「人間を信じられない」というところから始まった話ですが、「人間をもうちょっと信じてみてもいいんじゃないか」と言うところに着地するラストも好きです。(30代女性)
用心棒
<あらすじ>
二大勢力の縄張り争いに明け暮れ、すっかり荒れ果ててしまった小さな宿場町。そこに流れてきた桑畑三十郎と名乗る凄腕の浪人は清兵衛親分の用心棒になるが、女房の強つく張りに嫌気をさし、敵対するもう片方の丑寅を訪ねる。丑寅には短銃を使う弟がいた。結局、両派を煙に巻き、同士討ちを企てるが…
ひたすら面白さを追求したハードボイルド時代劇
「影武者」では細かいところまで時代考証などにこだわった黒澤監督が、そんな面倒くさいことは抜きにして、とにかく時代劇の面白さを追求した映画です。引き込まれるような面白さがあれば、細かい点での違和感はまったく気にならず、ニヒルでハードボイルドな感じの三船敏郎に魅入られ、難しことは抜きに映画の楽しさを存分に楽しめます。マカロニウェスタンっぽさは、あちらがこの真似をしたのであって、本家はこちら。世界の黒澤の最高傑作であり、代表作です。(50代男性)
椿三十郎
<あらすじ>
ある夜、人気のない社殿で九人の若侍が密議していた。城代家老に汚職に関する意見書を提出したが受け入れられず、逆に大目付に諭され鬱憤を貯めていたのだ。そこへ物陰から一人の浪人が現れ、大目付が黒幕であると助言。現状はその通りで浪人は若侍達を手助けする事になり、お家騒動に巻き込まれていく…
武士の男らしい生きざまを描いた作品
この作品の魅力は緊迫感のある時代劇かと思いきやほっこりするようなシーンもあったりするバラエティー豊かなところと、ラストの一騎討ちのシーンです。特にラストのシーンの緊張感とそこからの衝撃の展開は他の映画ではなかなか体験できないと思います。黒沢明監督の力だけでなく、主演の三船敏郎の魅力もこの作品をさらに素晴らしいものにしていると思います。(20代男性)
生きる
<あらすじ>
三十年間無欠勤の市役所の市民課長・渡辺勘治はある時、自分が癌に冒されている事を知る。暗い気分の勘治に息子夫婦の冷たい仕打ちが追い打ちをかける。街に出て羽目をはずすが気は晴れない。そこで事務員の小田切とよと出会い、今までの自分の仕事ぶりを反省する。勘治は心機一転、仕事に取り組むが…
死を目前に控えた男が「生きる」意味を見つける話
毎日流れ作業のように日々を過ごしている市民課長の渡辺(志村喬)。そんなある日、体調不良をきたした彼は医者の診断を受け、自分の余命があと幾許もないことを悟る。死への恐怖から自暴自棄になった渡辺。約30年間一日も休まず働いてきた市役所を無断欠勤して遊び呆けるが、虚しさが残るだけだった。そんなおり、部下の小田切と偶然出くわし、若くエネルギッシュな彼女から刺激を得ることで、「生きる」ことの本質について考え始め、何か人のために役立つことをしたいと考えるようになる。
主人公の渡辺が公園のブランコを漕ぐシーンがあまりにも有名な今作。見ていて、どう生きたいかについて考えさせられました。いきなり生き方を変えることはそんなに容易なことではないけれど、ほんの少しだけ頑張ってみようかなと思わせてくれる作品です。(30代女性)
赤ひげ
<あらすじ>
貧しい人々の為の医療施設・小石川養成所に派遣されたエリート医師・保木登は、赤ひげが所長を努める下で働く事が不本意だった。しかし、貧困にあえぎながらも懸命に生きる人々と接し、座敷牢の狂女や娼家の幼女に出会ったり、赤ひげの医療技術の深さを垣間見るうちに、次第に考え方が変わっていった…
信念を貫く医師の姿に感動する作品
医療に携わる人全員に観てほしい傑作です。
地位も名誉も求めず、自分の信念を貫く赤ひげ。見習いとしてやってきた登が一人に人間として赤ひげの元で成長していく様が描かれます。まだ麻酔もない時代の手術描写には目をそむけたくなります。特に印象的だったのが死にそうな男の子を助けるために、皆が井戸に向かって男の子の名前を呼び、この世に生をとどめようとするさまです。今の時代欠けている暖かい人間同士の繋がりも描いており、あたたかい映画です。(40代女性)
隠し砦の三悪人
戦国の乱世、秋月家は隣国の山名家と戦って敗れる。秋月家の侍大将・真壁六郎太は、世継ぎの姫君・雪姫を擁して隠し砦にこもる。六郎太はお家再興のための軍資金を運び出す脱出計画を練るが、敵地を横断突破するより他に道はない。六郎太、雪姫ら一行は奇策に満ちた敵中突破作戦を開始する・・・・・・。危機また危機、アクションに次ぐアクションが小気味いい痛快娯楽時代劇。黒澤監督が初めて手掛けたシネスコ大画面の作品であり、張りつめた緊張感とダイナミズムが観る者を圧倒する。ジョージ・ルーカスが本作から「スター・ウォーズ」のC-3POとR2-D2コンビのアイデアを得たというエピソードは、あまりにも有名。
急展開の連続、凸凹珍道中
スターウォーズに影響を与えた事で有名な痛快娯楽時代劇。確かに冒頭しばらくは、はっきりオマージュと分かるので、並べて観ても楽しそう。
さて、足軽として戦に参加し、敗戦で落人となった凸凹コンビの小物っぷりがまずは笑いどころ。金儲けの欲で動き、時には裏切ろうとさえするが、苦境に陥ると手のひらを返して仲直りに至る様は、ほとんど定型化したドタバタコメディとも言える。それでありながら、脱走のシーンで捕虜の集団の人が押し合いへし合いの乱戦は、人間がぶつかり合う重さをひしひしと感じる画の強さがある。
後半、逃亡の緊張感と、表の主人公である三船敏郎無双のカタルシス、そして凸凹コンビの相変わらずの人間くさいやり取りが、縄のように寄り合わされて飽きさせない。
黒澤明の作品は所々ほろ苦さが加わるものもあるが、本作は娯楽に振り切った筋立てで、視聴後はさっぱりとした気分になれる。(40代男性)
天国と地獄
ナショナルシューズ重役・権藤の息子が何者かによって誘拐されるが、被害にあったのは実は運転手の子供だった。犯人は人違いをしていたのだ。犯人は疾走するこだま号に身代金を持って乗り込むよう要求してくるが、捜査陣は犯人の正体さえつかめない。そして事件は意外な展開を見せる・・・・・・。全編に渡って圧倒的な緊張感が溢れており、中でも日本映画史上に残るほど有名な、身代金奪取の意外なトリック・シーンが圧巻。他の犯罪映画とは一線を画したリアルなドラマ展開に、映画ファンのみならず世間が注目。日本映画では考えられないダイナミックさで、誘拐犯と捜査陣との息づまる対決を描くサスペンス映画の決定版。
スピード感を前面に出した作品でした。
天国と地獄は、現在では当たり前のスピードとアクションを合わせた作品で、当時としては斬新な電車を利用した、時間とスピードを合わせた、犯罪を描いた作品でした、当時としては、とてもスピード感のある、警察と犯人の対決がとても見ものの作品でした、今では当たり前になっている作品の原点になる作品になったと思います。(60代男性)
七人の侍
<あらすじ>
戦国時代、野武士達の襲撃に恐れおののく村があった。村人達はその対策として、用心棒として侍を雇う事にする。侍さがしは難航するが、才徳にすぐれた勘兵衛を始めとする個性豊かな七人の侍が決まった。最初は侍を恐れる村人達だったが、いつしか一致団結して戦いに挑むことに。しかし戦闘は熾烈を極めた…
本物の英雄たちの生き様
七人の侍はあの世界のクロサワ、黒澤明監督の代表作の一つで、勧善懲悪の時代劇ではなく、色々な人間模様が絶妙に描かれた名作です。死を覚悟しながら村人を守る七人の侍の姿は本物のヒーローそのものでカッコ良く、ハリウッド映画にも多大な影響を与え、のちに荒野の七人と言うハリウッド映画の名作へと受け継がれるほどでした。(50代男性)
夢
黒澤明とスピルバーグ。映画界の2人の天才が紡ぐ“夢”の世界は、斬新な映像のきらめきに満ちていた—。
クロサワが見た「夢」
監督が自身の夢を映画にしたと言うだけあって、ストーリーはふんわりしている一方映像が美しいので気に入っています。いい夢ばかりではなくて不思議な夢、怖い夢もあり全部で8つの短編に分かれていますが、富士山が噴火して原発が放射能漏れを起こす話が一番好きです。黒澤監督の活躍していた時代から今もずっと原発の危険性が指摘され続けていて何も変わっていないのが皮肉です。(40代女性)
「夢」の関連テーマ
デルス・ウザーラ
本作は、世界の巨匠黒澤明監督が、30年間にわたってあたため続けてきた企画であり、1971年同監督がモスクワ映画祭に出席したことがきっかけで当時のソビエトで製作されることになった「幻の作品」と呼ばれる一作。地誌調査のためにコサック兵6名を率いてウスリー地方にやってきたアルセーニエフが、はじめてデルスに出会ったのは1902年秋のある夜だった。デルス・ウザーラは、ゴリド人の猟師だと名乗り、天涯孤独の身の上で、家を持たず、密林のなかで自然とともに暮らしていることを、たどたどしい口調で話した…。大自然のなかで生きてきた男性と、文明の地から来た近代人たるアルセーニエフの友情を描いたドラマ。
大自然と共に生きる人生の光と影をハートフルに綴る作品
シベリアの奥地に入ったロシアの探検隊と彼らの窮地を救った少数民族の猟師デルス・ウザーラとの意外な出会いと悲劇的な別れの物語が、シベリアならではの雄大な自然を背景に、様々な人間模様や人情模様を交えながら詩情豊かに描き出されていて大変心に沁みる作品です。黒澤明とロシア人スタッフたちがタッグを組んで生み出された独特の映像美も素晴らしいものがあります。(50代男性)
一番美しく
太平洋戦争も末期に近い昭和十九年、若い女性達は挺身隊の名で軍需工場で働いていた。精密兵器のレンズ工場では渡辺ツルら数十人の女性が寝食を共にして頑張っていた。成績は着実に伸びていったが、次第に疲労の色を隠せなくなっていった。同時に些細な事からいさかいも起こるようになり和は乱れていく…。黒澤作品には珍しい若い女性の集団劇。監督自身、「私の一番可愛い作品」と述べている。撮影にあたっては、女優達から化粧や気取り、芝居っ気などを取り去る為、劇中で描かれている通りの集団生活を経験させた。またスタッフも工場の寮に住み込み撮影を行い、ドキュメンタリー・タッチのリアリティー溢れる作品となった。
戦意高揚プロパガンダ
黒澤明監督の最初期作品のひとつで、まあはっきりいうとプロパガンダ映画なのだが、映画女優さんを実際の軍需工場に務めさせてそれをドキュメンタリーとして撮るという手法は考え方としてはユニークだと思いますな。最近でも実際に水商売のバイトして役作りする女優さんとか、ホームレスの集団と一緒に生活してリアリズムを追求する男性俳優さんとか居ますので、時代を先取りした手法かなとも思います。(50代男性)
乱
<あらすじ>
戦国を生き抜いた猛将が、ある日突然引退宣言をし、自分の地位や財産を3人の息子に譲るところから物語は始まる。本来ならば息子達は立派に父の意思を継ぎ、父親も安泰のうちに老後の隠居生活を送れるのであろうが、そううまく物事が運ばないのが世のならい。やがて息子達は父親をないがしろにして血で血を洗う肉親同士の争いへと発展していく…
戦国時代の同族の間での争いのすごさ
一族の棟梁である一文字秀虎の跡目を巡り、激しく対立する一族たち。この映画では秀虎の後継者として一番ふさわしいかったのは正直すぎて父から敬遠された三郎だったとわかるのが、いささか遅かったように感じました。
戦国時代の一族間の争いが生み出した欲と権力争いのすごさを、壮大なセットと本格的な衣装で再現したお勧めできる作品だと感じます。(50代男性)