本格派から、人が死なないライトミステリまで。おすすめ国内ミステリ小説20選
「王とサーカス」米澤穂信
<あらすじ>
2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは? 『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生を左右する大事件に遭遇する。
何度も読み返したい、切ない異国ミステリー
毎度、鮮烈な作品を発表する米澤穂信氏の一作。
終始不穏な空気が流れる作品の雰囲気であり、主人公・御手洗万智のクールさが際立っている。
米澤氏特有の、至る所にヒントが隠されている文体はさることながら、これからの人としての在り方を考えさせられる作品。
さらさらとした文面に浮かび上がる小さな違和感が、最終的に大きなものとなり、御手洗と共に大きな衝撃を受けたことを忘れない。実際の事件をベースにしており、人間の本質を鋭く突いた、僕がすべての人におすすめしたい「王とサーカス」(20代男性)
「女王様と私」歌野晶午
<あらすじ>
真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「ひきこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてる。今日も可愛い妹と楽しいデートのはずだった。あの「女王様」に出逢うまでは…。数馬にとって、彼女との出逢いがめくるめく悪夢への第一歩だったのだ。ミステリ界の偉才が放つ、超絶エンタテインメント!
キモオタの頭の中大解剖
44歳の無職(70代の親にパラサイト)ロリコン男が人形フィギュアを妹に見立てて偏執的な妄想をする話が大半を占めます。
そこに『女王様』が物語に絡んで二転三転。ミステリ的なラストのどんでん返し自体も凄いが、主人公のロリコンオタクの日常的生態をオタク用語などをちりばめた描写自体に面白さを感じる一冊になっています。(30代男性)
「ハサミ男」殊能将之
<あらすじ>
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!
最後のページを読み終えたときに、あなたはこの事件をどう思うか
タイトルにある通り、ハサミという凶器で、次々と女性が狙われていくミステリー作品ですが、女性ばかりが狙われるという点でも、読んでいて恐怖を感じたりすると思います。
ただこの小説は最後まで読み終わって真相と犯人が分かった瞬間に、また違った印象を持つと思うので、是非ともある程度社会を経験している大人である女性に読んでもらって、改めて動機の面とか考えてみると面白いと思います。(30代女性)
「和菓子のアン」坂木司
<あらすじ>
デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(うめもときょうこ)(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの18歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは? 読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー!
日常に潜む美味しいミステリー
ミステリー=殺人、といった従来の血生臭い事件ではなく、和菓子屋で働き始めた女性がお客さんのふとした発言や行動から心に抱えている悩みやなかなか言いづらい本音を探っていくという新感覚のミステリーになります。
怖い描写が全くない作品なので、大人だけでなく小学校高学年くらいの年齢から楽しむことができる作品です。
そして和菓子が食べたくなります。
「和菓子のアン」の関連テーマ
「姑獲鳥の夏」京極夏彦
<あらすじ>
「二十箇月もの間子供を身籠っていることができると思うかい?」。昭和27年の夏、三文文士の関口巽(せきぐちたつみ)は東京は雑司ケ谷にある久遠寺(くおんじ)医院の娘にまつわる奇怪な噂を耳にする。しかも、密室から煙のように消えたというその夫・牧朗は関口の旧制高校時代の1年先輩だった。
憑きものは自分かもしれない
最初は人が怪異に襲われるような話かと思っていたが、読み終わった後全く違った印象に変わった。
読み進めるごとに物語も自身の考えも、人は思い込み、先入観が人を狂わす、それが誤りの第一歩だと思わされた。また宗教や地方の土着信仰なども深く書かれており、作者の知識の幅広さにも面白くて驚愕した。
出てくる登場人物たちも特徴があって面白いが、やはり京極堂の「この世には不思議なことなど何もないのだよ」のセリフは絶対的存在感として際立つ。(30代女性)
「姑獲鳥の夏」の関連テーマ
「殺戮にいたる病」我孫子武丸
<あらすじ>
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
猟奇的連続殺人の信じられない真実
猟奇的な連続殺人についてのお話です。最初から最後までドキドキが止まりません。実際に私は最後まで読み終わるまで夜も眠れませんでした。しかも読み終わった後にはもう一度読み返したくなってしまい寝不足が続きました。
性的なシーンやグロいシーンがあるので万人には薦められませんが、そのようなシーンはちょっと薄目で読んでも大丈夫なくらい面白いです!途中で飽きてしまったとしても、最後の最後まで読んでほしい作品です。(30代女性)
「殺戮にいたる病」の関連テーマ
「消失グラデーション」長沢樹
<あらすじ>
とある高校のバスケ部員椎名康は、屋上から転落した少女に出くわす。しかし、少女は忽然と姿を消した!? 監視された空間で起こった目撃者不在の“少女消失"事件! 審査員を驚愕させた横溝賞大賞受賞作登場!!
頭の中で構築したイメージを最後の最後にひっくり返される物語
ジャンルとしてはミステリー、叙述トリックの技法が用いられた作品となります。鍵となるトピックは今となっては認知されてきているものですが、この作品が刊行された2011年当時の私としてはとても良い意味で最後の最後に混乱させられたストーリーでした。
一度読み終えてからまた再読するとあらゆるところに伏線が敷かれていて二度楽しめる作品だと思います。(30代男性)
「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉
「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」
令嬢刑事(デカ)と毒舌執事が難事件に挑戦!ユーモアたっぷりの本格ミステリ、ここに登場!国立署の新米刑事、宝生麗子は世界的に有名な『宝生グループ』のお嬢様。
『風祭モータース』の御曹司である風祭警部の下で、数々の事件に奮闘中だ。
大豪邸に帰ると、地味なパンツスーツからドレスに着替えてディナーを楽しむ麗子だが、難解な事件にぶちあたるたびに、その一部始終を相談する相手は“執事兼運転手”の影山。
「お嬢様の目は節穴でございますか?」
暴言すれすれの毒舌で麗子の推理力のなさを指摘しつつも、影山は鮮やかに謎を解き明かしていく――
書き下ろしショートショート収録!2011年本屋大賞受賞、2011年 年間ベストセラー1位の大人気ミステリ!
櫻井翔&北川景子のW主演でドラマ化され、2013年には同キャストで映画化!
ネットで知り合ったメンバーのオフ会で起こる殺人事件
基本的に短編集で、事件現場で風祭とお嬢様が捜査していき、後にお嬢様が執事の影山に推理で解決されてしまうという流れ。 このやり方なので犯人の詳しい動機とかは省略しており、影山の強烈な一言がお嬢様を貶め、同時に読者への挑戦状の役割も果たす。 そこまで難解なトリックとかではないが、「花嫁は密室の中でございます」が印象に残る。 これまでの展開とは違い、上流階級の人間の中で起こる事件。 もう1人のお嬢様と執事が登場し、またそれが重要なキーワードとなっているのもよく出来ている。 2作目も読みたくなる出来。(10代男性)
「電脳山荘殺人事件」天樹征丸
<あらすじ>
パソコン通信で知り合った互いの本名も素性も知らぬ七人の男女。人里離れた山荘で彼らが初めて顔を合わせた夜、恐るべき殺意の罠が始動した。皆殺しを目論む犯人の意外な動機、金田一少年が看破した殺人トリックとは?
ネットで知り合ったメンバーのオフ会で起こる殺人事件
推理漫画でおなじみの金田一少年の事件簿の、小説シリーズ作品です。
イラストではなく、文章だからできる演出が活きているミステリー小説なので、漫画とはちがった楽しみ方ができます。現代でもある、ネットで知り合ったメンバーのオフ会が舞台なので、あまり時代のズレを感じることなく読みやすいです。
そして雪に閉ざされ、逃げ出すことのできない山荘という状況が、よりストーリーを盛り上げています。(30代女性)
「告白」湊かなえ
<あらすじ>
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラー。
娘を殺された母親の狂気的復讐
娘を殺された女教師が復讐する物語です。
娘を殺された母親の狂気が恐ろしいにも関わらず、それを淡々とした描写にしてあり、それがより一層引きつけられました。
どうして殺されなければならなかったのか、という怒りが込められていると思います。
そして、そこに付随している汚染されたとでも言うような人間たちが、この狂った物語を作っていると思います。(30代女性)