未来への架け橋!高校生に読んで欲しい小説17選
アルジャーノンに花束を
作者:ダニエル・キイス
<あらすじ>
32歳で幼児の知能しかないパン屋の店員チャーリイは、ある日、ネズミのアルジャーノンと同じ画期的な脳外科手術を受ければ頭がよくなると告げられる。手術を受けたチャーリイは、超天才に変貌していくが……人生のさまざまな問題と喜怒哀楽を繊細に描き、全世界が涙した現代の聖書。
何をもって「幸せ」と感じるかの物語
少し知能的に劣る主人公が、何かと成長し、何かと又戻っていく話です。
考えさせられるのは、主人公は幸せに暮らしている感じですが、実は周りに笑われていることもあります。ですがそれに気付かず、周りもそれを気付かないからこそ優しさを持って接することも多いですが周りの理不尽さも感じられます。
ですが、主人公がとあることから一旦は知能向上をしていくのですが、それにより自分がどう思われていたのかを思い知らされる点は残酷にすら感じてしまいます。
知っていた方がいいこと、知らなければ幸せなこと、何かと考えさせられる本だと思えます。(50代女性)
スメル男
作者:原田宗典
岡山から上京して東京の大学に通うぼく・武井武留は、母親を亡くした喪失感のためか、無嗅覚症になっていた。東大で作物の研究をしている親友・六川が、ぼくのために「臭い」の研究もしてくれるが研究所で事故死する。悲嘆にくれていると六川の恋人だったというマリノレイコが現れ、六川からぼく宛の荷物だと言ってシャーレを持ってきてくれる。マリノレイコによるとチーズの匂いがするというシャーベット状の中身に触ったときからぼくの身に異変が起こり始める。最初は犬が騒ぎ出し、次にはぼくの臭いを嗅いだ人がみんな嘔吐。住んでいるマンションに警察が調べに来たり、ついには東京都内を巻き込む異臭騒ぎにまでなってしまう。解決の糸口が見つからないまま、こんどは謎の組織に狙われることになり、なぜか味方になってくれた天才少年たちやマリノレイコといっしょの逃亡劇に!
青年の葛藤と行動力をコミカルに綴った青春小説
主人公が強烈な腋の下の匂いに悩むも、解決のために奮闘するという内容です。それだけを聞いたらあまり秀作のようには感じられませんが、重く暗くなりすぎないようなコミカルな筆致が素晴らしい?よって高校生でもスラスラと読み進めたくなる軽快さも魅力です。
事実、全く読書家ではない自分も高校生の時に読み、細かな笑いとちょっとした切なさに夢中になりました。自身のコンプレックスとどう付き合っていくかという点においても、高校生におススメしたい作品です。(40代女性)
「スメル男」の関連テーマ
あかね空
作者:山本一力
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。己の技量一筋に生きる永吉を支えるおふみ。やがて夫婦となった二人は、京と江戸との味覚の違いに悩みながらもやっと表通りに店を構える。明るく気丈なおふみの支えで、様々な困難を乗り越えながら、なんとか光が差してきた。やがて、ふたりは三人の子に恵まれる。あるときから、おふみはなぜか長男の栄太郎ばかりを可愛がるようになる。そして、一家にやがて暗い影が・・・。親子二代にわたって人情の機微を描ききった、第126回直木賞受賞の傑作時代小説。
豆腐職人をめぐる家族と江戸の人情の物語
直木賞も受賞した歴史小説だが、なかなか学生時代に歴史小説というととっつきづらい。
しかし本作は京から江戸に下った豆腐職人の物語ということで、歴史ものというよりも人情ものとして歴史小説に触れられ、またそこに描かれた人間関係が単純明快ではなく、それぞれの事情について思いを馳せられるので、多感な時期に是非一読してもらいたい。(40代男性)
六番目の小夜子
作者:恩田陸
<あらすじ>
津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
学校の言い伝えと謎の転校生をめぐる生徒達の物語
少しホラーで、小さなミステリーを覗くような作品です。高校という閉じた世界の裏にあるものを垣間見ることで、日常の捉え方がちょっとだけ変わるかも。
どちらかといえば真っ直ぐな人よりも、休み時間に小説を開いて読んでいるようなひねくれた高校生におすすめ。というか多少ひねくれていないとこの小説の良さは分からないし、理解できる人にこそ読んでほしい。(30代男性)
「六番目の小夜子」の関連テーマ
ソロモンの指環 動物行動学入門
作者:コンラート・ローレンツ
<あらすじ>
「生後まもないハイイロガンの雌のヒナは、こちらをじっとみつめていた。私のふと洩らした言葉に挨拶のひと鳴きを返した瞬間から、彼女は人間の私を母親と認め、よちよち歩きでどこへでもついてくるようになった……“刷り込み”などの理論で著名なノーベル賞受賞の動物行動学者コンラート・ローレンツが、けものや鳥、魚たちの生態をユーモアとシンパシーあふれる筆致で描いた、永遠の名作。
動物と友達になって会話してみたくなる!
動物行動学者のコンラート・ローレンツが、自分の家で色々な動物を飼い、それらの行動について愛情とユーモアあふれる文章で書いた、大変面白い本です。
この本を読んだ後は、いろいろな動物の行動に興味を持つようになりました。たとえば嫌われ者のカラスの行動にも愛嬌や知性を感じるようになり、人間の都合だけで動物を嫌ってはいけないなと考えさせられました。
動物の行動を観察していると、日常の心配事や嫌な事を忘れることができ、とてもリフレッシュされます。この本に書かれている動物の行動はもちろん、筆者の行動や感情も大変ユニークで面白いので、ぜひ若い人たちに読んで欲しいです。(40代女性)
小さき者へ
作者:有島武郎
子に対する父の深い愛情
有島武郎は、妻に先立たれ幼い子ども三人を男手一つで育てていましたが、子どもらが成人する前に夫のある人と心中しました。この一文だけを読むと、昨今芸能人の不倫が騒がれているように、不倫の末の自殺に嫌悪感を覚える人もいるでしょう。
武郎は素晴らしい作家でしたが、その死は現代のニュースと同じようにセンセーショナルな見出しで報じられ、自らの評価を醜聞で潰してしまったとも言えます。
「小さき者へ」は妻の死後、武郎が子どもたちにあてた手紙です。
彼の生きた時代、男は厳しい絶対権力で、まだまだ家庭のことは女性がすべきとされていました。
しかしこの手紙からは父親も、母親と同等に子どもを深く愛し、亡くなった妻を思いやっていることがよくわかります。
現代でも、親の愛は母からの愛を指すことが多く、父親の妻や子どもに対する愛情を知る機会は少ないのではないでしょうか。
報じられる見出しだけで馬鹿だ嫌いだと決めつけず、その裏に隠れている人間性や、どんな人生を歩み、なぜそうなったのか、考えるきっかけにしてほしいです。(30代女性)
レ・ミゼラブル
作者:ヴィクトル・ユゴー
<あらすじ>
貧しさにたえかねて一片のパンを盗み、19年を牢獄ですごさねばならなかったジャン・ヴァルジャン。出獄した彼は、ミリエル司教の館から銀の食器を盗み出すが、神のように慈悲ぶかい司教の温情が、彼を目ざめさせる。
必死に生き抜く中に希望がある物語
何が正義なのかを考えさせられる小説です。高校生までは、学校で習うことの中に正解がある世界です。今ある世界の価値観が、本当に正しいのか、社会で生きていく中で疑問も持たずこのまま進んでいくことが本当に良いことなのか考えるきっかけになると思います。あわせて、絶望ではなく、世界の中に希望があることを、力強く心から感じることのできる作品です。(40代男性)